人と犬の縁

 どうして人はペットを飼うのか。単純に可愛いからとか、動物との触れ合いが好きだとか、あるいはひとりで寂しいのでとか、番犬にとか子供の教育でとかいろいろでしょうけど、細かく見ればペットを飼う人の数だけ理由があるといえるかも知れません。それはペットとの「出会い」が人それぞれで、関係もそれぞれだからだと思うからです。
 いまでは家族同様のめす犬のミアは、3年ほど前に私たち一家が引き取る前はペンシルバニアの家のガレージにいつもつながれたままにされていたといいます。息子が飼っていたが結婚で引っ越し、親は犬の飼い方も分からす困っていたのを知った青木恵子さんが保護し、ニューヨーク動物愛護協会に預かってもらっていたのです。
 ちょうどその頃、私はニューヨークの田舎の一軒家に移り住み、犬でも飼おうかなと思っていました。青木さんから連絡があったのはその時です。これもなにかの縁なのかも知れません。
 子どもの頃、実家ではずっと犬を何匹も飼っていました。可愛がっていた犬が死んだときはもう二度と飼わないと思ったこともありますが、犬がいるのは当然の生活をしていました。
 実家を出てからはアパート暮らしが多かったこともあり犬を飼う機会はありませんでした。娘2人に恵まれましたが、8年前に妻を病気で亡くしました。妻の思い出がいっぱい詰まったアパートを引き払い、郊外の家に娘二人と3人で住み始めました。やがて娘も家を出て行くでしょう。犬でも飼いたいなと思うようになったそんな時です。
 ニューヨーク動物愛護協会で預けられたミアを2人の娘と一緒に見に行きました。娘たちは小さい犬が欲しかったようですが、ミアの顔、特に目にかつて飼っていた犬の面影を見て、引き取ることを決めました。ミアはとても人懐っこく「私を飼ってください」と言っているように思えたのです。
 ミアはかなりやんちゃで、決して小さくもないラブラドールのミックスなので、結構大変です。特にほかの犬に対してはアグレッシブなところがあり、ドッグトレーナーにも頼んでトレーニングさせていますが、散歩中は気を抜けないところがあります。とはいえ、あやしげな男性には警戒心が強いので、娘たちがミアと散歩するのは夜でも安心です。
 また大変賢く、記憶力は抜群です。教えたことはすぐ覚えます。ほかの犬も知らないわけでないので、たぶんひいき目だけではないと思います。娘二人も日に一回は散歩に行くのでとても懐いています。番犬としては申し分なく、出張などで娘二人だけ家に残す時などは、飼っていてよかったなと思います。それと仕事柄、家で座ったままコンピュータに向かっていることが多くどうしても運動不足気味になるし、物書きなので深夜まで働くことが多く生活が乱れがちになるのですが、ミアを日に2~3度は散歩に行かせなくてはならないので、規則正しい生活になります。おかげで1年ほどすると慢性の腰痛がかなりなくなりました。最初はミアに朝起こされることが多かったのですが、朝方まで仕事して熟睡しているような時は私に合わせて遅く起きたりするようになりました。
 ミアが元気がなかったり、病気になったりすると家族3人で一喜一憂します。やはり毎日世話していると可愛くて仕方がない。来て1年ほどは重いものはないものの、耳が腫れたり、風邪のようなものを引いたり、いろいろな病気になりましたが、3年目からはほとんど病気はありません。やんちゃで困ることもあるのですが、世話がかかるからこそ可愛くもなる。親ばかならぬ「犬ばか」ですね。
 犬を飼い始めた話をすると、妻をなくしたからその埋め合わせ、代替物と思われがちかも知れません。しかし実際はそんなことはなく、娘が3人になったような感じです。実際、特に下の娘とミアは昼寝の格好などがとても似ていて、上の娘と大笑いしたりします。上の娘もまだ家にいますし、一家4人(正確には3人と1匹)でそれなりに賑やかな家族です。いつもミアは家にいて寂しいと感じることはないので、再婚にいまいち力が入らない感じで、いいことなのか悪いことなのか。でもまあ、ハッピーであることには違いないのでしょう。

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